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Kokone-works

好き放題に、「お酒を飲んだ勢いで」。 サークル活動、はじめました。「ここだけネバーランド」というサークルの主催です。 

キングスマン(マシュー・ヴォーン)※9/11公開 ネタバレ注意

すばらしい。 ● おおよそ誰もかれもが、子供のころに読んだ漫画(私はコロコロ世代なのですが、『Bビーダマン』とかドラえもんの『南海大冒険』とか原恵一監督の『クレしん』映画)に感化されて、自宅の地下や、南の島の山の中(あるいはバミューダトライアングルの真ん中とか海底とか南極の真ん中)に秘密基地の建造を想像し、自由帳に描いたはずである。 ● たとえば、木造のコテージがあって、中に入ると暖炉や書斎の裏に秘密の階段があって、そこをくだると踊り場と行き止まりしかないが、どこかにエレベーターの隠しボタンがある。それをポチッと押すと、部屋のエレベーターが下へ、下へと動く。そのうち木の壁がコンクリ張りのものに変わり、地下に降りると岩肌と鉄筋にかこまれた、『レイダース』の倉庫もかくやの超巨大空間がぐわんと広がっている。巨大コンピューターのサーバーもかねた巨大な円筒が中央にそびえたち、飛行機、潜水艦、種々様々な乗り物が並び、秘密の研究をしていたり、おいしいもの食べたり、テレビゲームしたり、世界を飛び回ったりしている。もちろんスパイ活動もしていて、指令を受け取るのはきまってジャグジーに浸かっているときである(オイ) ● で、最近のスパイ映画が『5代目007』シリーズや『ダークナイト』『ボーン』『24』シリーズの大ヒットでポリティカル・サスペンス寄りの作品が多くしめる中、この『キングスマン』は、私の、いやみんなの子供のころの楽しかった夢想が強調して描かれた、久々のスパイ映画でした。(そんな映画は『チーム・アメリカ』『アイアンマン』以来です。なお、左作同様にキングスマンは毒入りの映画です) ● いや、テーラー店の試着室がまるまる巨大エレベーターになってて、地下に降りると『空飛ぶゆうれい船』にでてくるような動く椅子とチューブがあるんですよ。それに乗ったらすごい速さでキングスマンの秘密基地へ向かう、というのがあって、これ、かつてのロジャー・ムーア路線の『007』のパロディのはずなのになんかわくわくしちゃってさあ。そういうのが好きな人には、無条件でお勧めします。『レイヤー・ケーキ』から『X-MEN ファーストジェネレーション』に至るまで作中にその偏愛の片鱗を作品のなかににじませてきたマシュー・ヴォーンがついに撮りあげたスパイ映画。『オースティンパワーズ』とかで旧ボンド映画の面影を追っかけてきたり、原恵一クレしん』のジャケットを見るだけでコメディとわかっていてもアンテナが反応してしまような諸兄がたにとっては必見の傑作。(以下、ネタバレありです。封切りまで間があるので、続きはゆっくり追記していきます)

スカイフォール』で「ペン型爆弾とかだっせーよ」と吐いた新生Qに逆らうように、魅力的なペン型毒薬や『ダークナイト』でジョーカーも用いていた仕込み靴をはじめとするスパイ道具を見せつけた後、コリン・ファース「最近のスパイ映画はシリアスなのばっかりでいかん」と。スパイ映画が変わり始めたのはたぶんブロスナンボンド『ダイ・アナザー・デイ』あたりがちょっとだけ顰蹙を買った裏で『トリプルX』(ちなみにM役がサミュエル・L・ジャクソンだったりする)が大ヒットしたあたりで、全体がの路線転換がブームになったのはクレイグ版『カジノ・ロワイアル』と『ダークナイト』の大ヒットあたりかなと。「昔のボンド映画は悪役が魅力的だった」。ハリーが「ヴァレンタイン、お前の正体を知ってるぞ」、と互いが探り合う描写である一方で、監督(とこの映画のファン=俺含む多くの人)の本音。いいなあ。このせりふ回し。『スカイフォール』はむしろ007シリーズの中でもかなり好きなほうだけど、『ムーンレイカー』な路線も定期的に欲しいよなあ。って思ったり。なのでシリーズ化を熱望。  ● この『キングスマン』、ムーアやおポンチスパイ映画の流派にのっとったと見せかけて、実は「礼儀作法が人をかたどる」「人の素質は出自できまるものではない」「階級制度はもう古い」とか、一流大卒と高校中退のプータローの主人公が就職試験を競い合うとかで、出自に捉われるな、というメッセージが含まれているのが好きだったりする。「ユダヤ人も黒人もゲイもジャップも、その星の元に生まれたから悪だ、死ね」とのたまう南部のキリスト教右派がレナード・スキナードの「フリー・バード」のリズムにのって(大傑作『デビルズ・リジェクツ』のラストに使われてるけど、この裏腹なシーン)皆殺しにされたり(『スピード・レーサー』(←ボロカスに酷評されたけどこれ傑作だよ)にもこんなシーンあったなあ。皆殺しじゃないけどガキが敵の会社で暴れるシーン)、敵役に囲われた「下層階級のビンボー人は死ね」という意見に賛同した政界財界の大物たちの頭が、ボルガ博士よろしく、頭の中に仕掛けられたダイナマイトが『威風堂々』にあわせて虹のような煙をあげて爆発する末路は本当に愉快痛快で、学歴コンプもちのジャップの平民としては本当に快哉をあげました。最高。 ● まあ、大枠はマシュー・ヴォーン監督らしく皮肉な笑いに満ち溢れていて(ちなみにダメ人間の成り上がりの話だけど監督は貴族の血引いてるエリートだったりする)、タイム誌の見出し「クリスマスは中止になりました」とか。とにかく笑える映画です。御堂会館内もドッカンドッカン笑いが起きてました。特に人が死ぬシーンであんなにみんなが大きな笑い声あげてるの聞いたのは初めてかも。あと一歩で拍手いってたよこれ。 ● 冒頭にさらわれて超おどおどしている大学教授役でマーク・ハミル(ご存じルーク・スカイウォーカー)ご出演。いや、もうどっちかというとルークつうよりすっかりオーウェンおじさんになっちゃってて。しかしやっぱり……? ● 今回、旧007パロディとあって、たいていの悪のボスってペルシャ猫とか鮫とか飼ってるんだけど、今回ちょっとその路線ができない(サミュエル・L・ジャクソンペルシャ猫飼ってるってのもおかしいし)かわりに主人公側に犬を飼わせるって処理なのかな。後半タクシーに乗っけて以降はフェードアウトするので一見ストーリーにイミなさげなんだけど、そういうことなのかな。 ● で、このタロン・エガートンという新人演じるエグジーなんだけど、この演技がよくて、最初不良やってるときは猫背なんだけど、物語が進むにつれて、びしっとした姿勢に変わっていく。スーツを着る段になったら、もう過去の彼はいない。そこは感動的なんだけど……――『キック・アス』と同じ欠点をこの映画は持っていて、主人公が後半いきなり殺戮マシーンになってしまうってとこ。確かに、キック・アス同様其処に至るまでの過程にいろんな人間の死亡シーンや死体を見てはいるし、死体袋とかで死のモチーフは細部にも徹底して描かれまくってるし、ラストの大立ち回りは弔い合戦である。母と娘と自分たちを殺そうとする上層階級の人間との命を天秤にかけるなら、誰だって母と娘をとるでしょう。でも敵役に「自分の手で人間を殺すって最悪すぎるわ!」と言わせて殺しの不快感をダメ押ししてるうえに、動物を殺せない(パトカーには突っ込むけど)という設定もあるので、そこだけ違和感を感じてしまう人もいるかもしれない(多分イーバート氏が存命なら『キック・アス』同様に一つ星つけてたかもしれない)。 まあ、それでもアクションがかなり素晴らしいから自分は鑑賞中はそんな気にならなかったけど。映画の終わりに童貞を捨てる=ボンド映画の一時期テンプレだった、仕事終えたらセックスオチというのも正しい。後半で理屈を捨てているんですが、それが楽しさにつながっている(そういう意味では『ラブライブ!』もくさしたもんじゃないかもしれない)。 ● 悪役を守る女性騎士ガゼル・演ずるは、ソフィア・ブテラなる方。男らしい顔してて、この人途中からアングルとかでもうブルース・リーにしかみえなくなっちゃうんですが、最後の最後で「あのキック」を披露した瞬間、もう大爆笑とともに、とめどなく涙が溢れるのですよ。もういっそ鼻こすってくれたら今年のベストワン確定だった。(それでも三傑には入りそう)